ハッピーメールを長く利用していると、今でも妙に細かいところまで覚えている女性がいる。
今回の女性もそうだった。
彼女は人妻だった。
そして、旦那さんについて聞いたときに印象に残ったのが、
「野球の審判をしている」
という話だった。
野球選手でも監督でもない。
審判。
私は野球場で審判を見たことはあっても、その家族がどんな生活をしているのか考えたことはほとんどなかった。
そんな私とはまったく違う日常を持つ女性と、ハッピーメールを通じて知り合った。
そして二人で会った日。
親密な時間を過ごしたあと、彼女は服を整えてソファへ座った。
私は、
「これで少し落ち着くのかな」
と思っていた。
ところが彼女は私のほうへ近づいてきた。
そして今度は、急ぐような雰囲気ではなく、ソファでゆっくりと何度もキスをしてきた。
私にとっては、その時間のほうが妙に記憶に残ることになった。
ハッピーメールで知り合った人妻
最初はいつものようにメッセージだった。
プロフィールを見る。
少し気になる。
メッセージを送る。
返信が来る。
そこから何度かやり取りをする。
出会い系では、この途中で終わることも珍しくない。
返信が突然なくなる。
予定が合わない。
会う話になっても流れてしまう。
しかし彼女とはやり取りが続いた。
話していくうちに、彼女が既婚者であることも分かった。
旦那さんの仕事が印象に残った
彼女との会話で、なぜか今でも覚えていることがある。
旦那さんが野球の審判をしているという話だ。
私は、
「珍しいな」
と思った。
もちろん世の中には野球の審判をしている人がいる。
でも、自分が出会い系で知り合った女性の夫がそうだと聞くと、急に現実感が出てくる。
彼女には、私と会っていない時間の生活がある。
家庭がある。
旦那さんがいる。
その旦那さんにも仕事がある。
当たり前のことなのだが、ネット上でメッセージをしているだけだと忘れそうになる。
実際に会うことになった
やがて二人で会う日が決まった。
サイトやメッセージでどれだけ話しても、実際に会う瞬間は別だ。
本当に来るのか。
写真と雰囲気は同じなのか。
会話は続くのか。
私も多少緊張していた。
そして待ち合わせをして、彼女と顔を合わせた。
最初は普通に話した。
ネットの中にいた女性が目の前にいる。
何度経験しても、私はこの瞬間に独特の感覚がある。
メッセージと実際に会うのは違う
文章では積極的に見える人が、会ってみると静かな場合もある。
逆もある。
彼女にも、メッセージだけでは分からなかった雰囲気があった。
声。
話し方。
表情。
ちょっとした沈黙。
こういうものは実際に会わなければ分からない。
二人で話しているうちに、最初の緊張は少しずつ薄れていった。
そしてその日は、結果としてかなり親密な時間を過ごすことになった。
そのあと彼女は服を整えた
しばらくして彼女は服を整えた。
ここで私は、
「そろそろ帰る準備かな」
と思った。
親密な時間が終わったあとというのは、相手によってかなり雰囲気が違う。
すぐ帰る人もいるだろう。
少し話す人もいる。
スマートフォンを見る人もいる。
彼女はソファに座った。
私も近くにいた。
そこから普通に会話をするのだと思っていた。
ところが違った。
ソファで彼女のほうから近づいてきた
彼女が私のほうへ近づいてきた。
そしてキスをしてきた。
一度だけではなかった。
時間を急いでいるようにも見えない。
むしろ、それまでより落ち着いていた。
私は少し意外だった。
すでに二人で親密な時間を過ごしたあとだったからだ。
それなのに彼女は、まだ私との距離を離そうとしなかった。
ソファに座ったまま、何度もゆっくりキスをする。
私は、
「まだこうしていたいのかな」
と思った。
なぜかキスのほうが記憶に残った
今振り返ると不思議だ。
その日に起きた出来事の中で、強く覚えているのはソファで過ごした時間だった。
派手なことをしたわけではない。
二人で座っていた。
彼女が近づいてきた。
キスをした。
ただそれだけだ。
しかし、その「ただそれだけ」が長く記憶に残った。
親密さというのは、必ずしも行動の激しさで決まるものではないのかもしれない。
帰る直前の時間は少し違う
会った直後には緊張がある。
これからどうなるか分からない。
しかし帰る前になると、その日の出来事を二人とも知っている。
相手がどんな人なのかも、会う前よりは分かっている。
彼女も安心していたのかもしれない。
もちろん、本当の気持ちは本人にしか分からない。
だから私は、
「彼女は絶対にこう思っていた」
と断定するつもりはない。
ただ、帰る直前になっても距離を取らなかったことは印象的だった。
「人妻」という言葉だけでは見えない部分
出会い系の体験談では、
「人妻と会った」
という部分だけが強調されやすい。
しかし実際に会うと、当然ながら一人の人間だ。
笑う。
迷う。
話す。
黙る。
寂しそうにすることもある。
彼女にも家庭とは別の感情や悩みがあったのかもしれない。
ただし、私はそれを完全に理解できたわけではない。
一度会っただけで、相手の人生全部が分かるはずもない。
既婚者との関係には現実的な問題もある
一方で、相手が既婚者なら忘れてはいけないこともある。
本人同士だけの問題では済まない可能性があることだ。
配偶者がいる以上、秘密の交際や性的関係は家庭問題や民事上のトラブルにつながる場合がある。
「相手から誘われたから大丈夫」と単純には考えられない。
当時の出来事を振り返るほど、この点は切り離せないと思う。
刺激的だった部分だけではなく、そうした現実も含めて記録しておきたい。
ハッピーメールでは相手の日常までは見えない
ハッピーメール上で見えるのは、その人の一部分だ。
プロフィール。
写真。
自己紹介。
メッセージ。
それだけでは、その人が普段どんな生活をしているのかまでは分からない。
今回の彼女にも家庭があった。
旦那さんがいて、旦那さんには野球の審判という仕事があった。
そして私と会った時間が終われば、彼女は自分の日常へ戻っていく。
そう考えると、出会い系で誰かと会うことには、画面上だけでは分からない背景があるのだと思う。
最後まで残ったのはソファの記憶
その日のことを振り返ると、私はいくつもの場面を思い出す。
ハッピーメールでのやり取り。
待ち合わせ。
初めて顔を見た瞬間。
旦那さんが野球の審判だと聞いたこと。
そして二人で過ごした時間。
でも最後に浮かんでくるのは、ソファだった。
服を整えた彼女。
隣に座った私。
そして彼女のほうから近づいてきた。
何度も交わしたキス。
出会い系の記憶は、必ずしも一番刺激的だった瞬間だけが残るわけではない。
むしろ、何でもない数分間のほうが何年経っても残っていることがある。
ハッピーメール記録帖として残しておく
人妻だった彼女。
旦那さんは野球の審判をしていると話していた。
私たちはハッピーメールで知り合い、実際に会った。
そして親密な時間を過ごしたあとも、彼女はすぐには帰ろうとせず、ソファで私との距離を縮めてきた。
なぜ彼女がそうしたのか。
本当の答えは分からない。
寂しかったのかもしれない。
安心したのかもしれない。
単純に、その時間をもう少し続けたかっただけかもしれない。
私はそこを勝手に決めつけたくない。
ただ、長い時間が経っても、その日の最後の場面は覚えている。
派手な出来事より、帰る前の静かな時間。
それもまた、私のハッピーメール記録帖に残っている一つの記憶である。


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